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2014年8月5日 教育とITについて、日本とアメリカの違いから見えるもの。

日本の教育現場でのITの捉え方

日本の教育現場では、大学を除いて、ITはほとんど無視されていると言っていいと思います。
そればかりか、ITはトラブルを起こす厄介なものという捉え方をされているように思います。

  • スマホばかりやって、勉強しない。
  • Lineなどで、仲間はずれやいじめがある。
  • 既読スルーから友達関係が壊れた。
  • 出会い系サイトから犯罪に巻き込まれた。

など、学校の先生や親御さんの声を聞くと、こういったネガティブな言葉ばかりが聴こえてきます。
ITは子どもをダメにするもの、勉強の邪魔になるものといった、どちらかといったら悪いもののように扱われているように思います。
小中学校と高校の教育現場では、ITはほとんど活用されていません。

一部の学校では、パソコン授業がありますが、内容は非常に乏しいものです。

本格的にパソコンを活用して、パソコンを学習のツールとして積極的に使っている学校があるでしょうか。
ほとんどの学校が、昔ながらの、黒板と教科書とノート、そしてプリントを使った授業を行っています。

パソコンは、親のパソコンを触ってゲームをしたり、ユーチューブを見たりする程度、という場合が多いのではないでしょうか。

ITの重要性

しかし、現代社会を見ればすぐに、ITの重要性に気付くはずです。
パソコンが使えなければ、仕事ができないという職場も多くなってきました。
特に事務系では、パソコンが使えなければ就職は難しいでしょう。
現代社会に生きていくには、ITは避けて通れないものなのです。

これだけ社会にパソコンやITが普及している中で、なぜ教育現場では軽視されているのでしょうか。
それは、目先の負の部分にとらわれて、有益な部分が見えていないからでは無いかと思います。

事なかれ主義と言いますか、日本人的な発想で、有益な部分よりも、負の害をなくすことばかりを考えてしまっているのではないでしょうか。

子どもがITを使うのには、気をつけなければいけないことがたくさん有ります。
トラブルも起こるでしょう。でも、リスクがあるからといって、そこから逃げてしまえば、いつまでもITを使えないままになってしまいます。
逃げていては、リスクを克服することができません。

今の教育現場に求められていることは、こどもからITを遠ざけることではなく、ITを活用し、ITの負の部分を克服する強さを身につけることではないでしょうか。

角南 萌:天才中高生、驚異のプレゼン (2/7) by Life is Tech !

今日は、この問題に対するヒントを与えてくれる、プレゼンテーションをご紹介します。

プレゼンターは、角南 萌さんという、現在高校1年生の女の子です。
彼女は、中学3年生のときに「見えるプレゼンタイマー」というiPhoneアプリを開発したという、才能あふれる女の子です。

彼女は、現在日本に住んでいますが、小学校2年生の時に父親の転勤でアメリカに渡りました。
その時のアメリカの学校でのITの活用の仕方と、その後日本に帰国してから通った日本の学校のITを全く活用しない日本の違いを分かりやすく解説してくれています。

文字起こし

こんにちは。角南萌です。
今日は、私がどうやってテクノロジーの世界に興味を持ったか、また、ニューヨークでの経験をベースに、日本とアメリカの教育の違いについて、私が感じたことをお話ししようと思います。

でも、その前に知らない人のために、私のアプリ「見えるプレゼンタイマー」についてちょっとお話ししたいと思います。
去年の今頃、学校でイベントの大会がありました。
そのとき痛感したのは、人前でしゃべるには時間配分がとても重要ということです。
そのせっかくのプレゼンもタイムマネージメントが出来ないと台無しになってしまいます。
そこで、App Storeで何か無いかと探したんですけど、普通の数字のタイマーしかりませんでした。
私はもっと見やすい、プレゼンの時間配分が一目で分かるタイマーが欲しかったんです。
最初に浮かんだアイディアがだんだん具体的になって、機能を工夫しながらプログラミングをしているうちに、実際にアプリになって「見えるプレゼンタイマー」が出来上がりました。
嬉しいことに、世界中で4万人もの人が使ってくれています。
日本はもちろん、海外からもフィードバックを貰っています。
このアプリのコンセプトに共感してくださる声が多くて、本当に励みになっています。
このアプリは春頃からゴールデンウィークや夏休みに集中して作りました。
でも、実はそれより以前からテクノロジーの教育を受ける機会があって、そのおかげでこうして自分のアイディアをこうして形にすることが出来たんだと思います。

とはいっても、デジタルネイティブというほど生まれつきデジタルだったかというとそうではなく、私は小さい頃は結構アナログな子どもだったなと思っています。
私が生まれたのは1998年で、このカラフルiMacが発売された年です。
家にもこれがあったんですが、小さい頃はあまり触らせてもらえませんでした。

そんな私の生活にコンピューターが入ってきたのは、小学校2年の時です。
父親の転勤で海外に引っ越して、インターに入学しました。
そこはアメリカのカリキュラムでタイピングを習ったり、オンラインで宿題をするようになりました。
それで両親も結局勉強なら仕方ないということで、家のパソコンが解禁になりました。
これは当時ESLで使っていたリーディングのオンラインプログラムです。
少しずつ難しくなっていく英語の本をナレーションの発音に合わせて読むことですぐ英語の本が読めるようになりました。

そして、3年生になると友達との遊びにもコンピューターが入ってくるようになりました。
友達の間でウエブサイトを作るのが流行っていて、私もすぐに夢中になりました。
好きな写真をアップして、私だけんのコンテンツを作るのがとてもおもしろかったんです。
そして小学校4年でアメリカのニューヨークに転勤になりました。

10歳の誕生日にiMac 、そしてクリスマスにiPhoneを両親からプレゼントされました。
これのおかげで、前の学校との友達との連絡もチャットやFacebookで簡単にできるようになりました。
そして友達の遊びでもiMacでオリジナルのミュージックビデオを作ったりと大活躍でした。

そして、小六の時、ニューヨークの私の学校でラップトップインテグレーションプログラムが導入されました。
6年生になると生徒全員にMacBookProが家から出るんです。
みんなこの時が来るのをずっと楽しみにしていました。
生徒には学校ドメインのメールアドレスが割り当てられ、宿題や学校からの連絡もほとんどが学校のwebサイトを通じてできるようになりました。

また質問があれば先生に直接メールをしてサポートを受けることができ、その際先生にメールするときのマナーもきちんと教えてもらいました。

また学校にテクノロジー専用のヘルプデスクがあって、エラーやトラブルがあるとすぐに相談に乗ってもらえるんです。
もちろん校内にはWi-Fiが完備されていました。
ITはコンピューターの授業以に外もすべての教科で活用されました。
例えば理科社会のプロジェクトでは愛ね備やPhotoshopなどのソフトも活用しました。
オンラインのソフトも豊富に用意されていて、例えばオンラインのブリタニカの百科事典や専門の研究機関の有料のリソースなども学校のアカウントでリサーチなどで利用することができました。
それから生徒がトラブルに巻き込まれないようネットを使う注意点も細く指導されました。
学校ではサイバーブリング、つまりネット上のいじめ問題についてのビデオを作りました。
学校ではフィルタリングをかけるのではなく生徒の判断力、責任感を養うことが重視されていました。
私のニューヨークの学校は女子校で、どちらかというと保守的な学校だったので、ITの導入には慎重な意見もあったそうです。
でもITのリスクから逃げるのではなく、リスクと正面から向き合い対応する力をつけるという発想の転換があったそうです。
実際にこの学校でこのプログラムはとても上手くいっていたと思います。

コンピューター は私にとって.友達とつながり、 情報交換し、 創造する道具となりました。
ITは自分のアイディアを実現するために欠かせないツールなんです。
そのうち、コンピューターを使ってもっと自由に創造したいという思いが生まれました。

そんな時Facebookの初期を描いた、ソーシャルネットワークという映画を見たんです。
一見何の変哲もない文字や記号の羅列が1つのプログラムとなって数億人の人々を結びつけるパワーを持つことに感動し.私もやってみたいと思いました。

それから、アメリカのITキャンプに参加したりiTunes Uの授業を通してプログラミングを実際に学び始めたんです。

お話ししてきたように、ニューヨークではコンピューターはどの教科にも不可欠なツールになりました。
なので、帰国して編入した日本の学校は、カルチャーショックでした。
日本の学校ではコンピューターは勉強に必要ないのです。
なぜなら、日本の勉強は、記憶に重点が置かれていて、先生が黒板に書いたことをノートに写して、それを暗記してテストするというやり方だからです。
ひとりひとりのアイディアや創造性は無視されているんです。

アメリカの学校では、リサーチしたり考えたり議論してプロジェクトをまとめるクリエイティビティが求められます。
そのために、ITが効果的に生かされています。
授業のスタイルも、先生が一方的に情報を伝える様なものではなく、教室は生徒同士や先生との対話や協力する場です。
そこでは、私自身が主役であり自分がやりたいこと、知りたいことを勉強していると感じることが出来ます。
たとえば、今私が通っているアメリカンスクールのレンゲージアーツ、つまり国語の時間では、一人ひとりの文章の解釈や分析をクラウド上で共有し、お互いにフィードバックを掛け合っています。

一方、日本の学校では黒板に先生が書いた解釈をノートに書き写し、テストのために暗記するというスタイルでした。
この違いの一番の理由は、日本ではみんなの関心が試験や大学受験に集中していることです。
その大学入試がペーパーテストだけで行われるので、良い結果を出すためには、紙と鉛筆で暗記や計算に明け暮れるしかないということです。
だから、日本の学校では、想像力や表現力は後回しで、ITは教室では歓迎されない存在なのです。

でも、日本の中高生もいつかは学校を出て、世界に出て、世界の人と情報やアイディアを交換し合って、新しいものを作り出すことが求められるのではないでしょうか。
そのとき、ITを使いこなせなくて、はたして自立した大人になれるのでしょうか?
ITはアイディアを形にする道具です。
子どもなら誰でも持っているクリエイティブな発送を広げてくれる、とてもためになるツールです。
ITを使うか使わないか迷っている余裕はありません。
答えは分かっていると思います。

でも、日本の学校が受験のための暗記学習に力点を置いている限りITが教室に入り込む余地はないでしょう。
テクノロジーの導入と同時に授業や試験の形そのものも改革をしなければ意味がないと思います。
私が理想だと思うのは、テクノロジーを学んで終わりではなくて、テクノロジーをツールとし、興味が有ることを勉強したり新しいことを作り出したりする教育です。
テクノロジーを畏れず使って、そこから先にある教育が大事だと思います。
ITから始る新しい教育で、変わることを畏れずにチャレンジしましょう。

最後まで聞いてくださって、どうもありがとうございました。

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